本記事は「【Road to FUKUOKA】夏目晋太郎さん①」の続きです。
第二部では、快進撃を続ける夏目さんの、日々のトレーニングや、レースのための工夫にを、お伺いしました。
・・の前に。
――夏目さん・・・。
夏目:ん?
――阪神・・・ですね。
夏目:うん、そうだよ\(^o^)/
――好きなんですか?
夏目:好きとか、そういう問題じゃなくてだね。タテジマのユニフォームは俺の魂なんだよ。2014年といえば能見の連続二桁奪三振記録のメモリアルイヤーだよ?その年に僕も良い走りをしたい!それが一番の原動力だったね。ちょうど北上マラソンの日もクライマックスシリーズで能見が投げて、8回無失点だよ?自分の快走と能見の快投がなんか重なっちゃっt
――野球のユニフォームで速いって、カッコイイですね!
夏目:・・・・・・・・本当に記録を狙うときは着ないけどね(笑)
普段も、たぶん阪神ファンと思われる人から熱烈に応援を受けるし、大阪マラソンでは特に沢山応援してもらえたような気がする!
――巨人ファンが見てないと良いですね、このインタビュ
夏目:なんか言ったか?
――あっ いや その・・(・_・;)ヤベェ
レースで大切なのは『段階的な目標』を持つこと
――夏目さんのレースは、前半から攻めの走りをして、後半に粘る走りがほとんどですね。
夏目:そうだね・・ペースダウンしてるわけだから、「失速」と表現した方が良いかもしれないけど・・^^;
――いえいえ。ハーフの通過がハーフ自己新!みたいな走りをしても、後半はキッチリまとめているのはスゴイですよ。
夏目:うん・・ありがとう。
――マラソンで攻めの走りをしているのに、撃沈することなく、少ないペースダウンでフィニッシュできる強さは、何だと思いますか?
夏目:そうだなぁ。気持ちの面では、必ず何段階か目標を持つようにして、レースを完全に捨てることだけはしないように、心掛けているよ。
――何段階かの目標・・例えばどんな感じですか?
夏目:例えば、自己新を目指すレースの場合でも、自己新を『第一目標』と考えておく。それで、第二目標が2時間40分、第三目標が2時間50分、第四目標が最低ラインのサブスリー、という感じかな。
――なるほど。たとえば、自己新を狙って走り出したものの、何らかの原因で「自己新は狙えない」と感じた場合、第二目標にシフトするという感じですか?
夏目:そう!そんな感じ。
途中でペースが維持できなくなった時・・例えば、自己新(2:36)を狙って走り出したけど、25kmでそのペースを超えてしまった、とする。
諦めてしまったらその後の17Kmはただ耐えるだけなんだけど、目標を2時間40分に切り替えれば「まだ余裕がある」わけなんだよね。
(ちょっと計算して)25kmの時点で、第二目標まで2分弱の貯金があるわけだから、1kmあたり5~10秒くらいは、ペースを落としても大丈夫。そう考えれば、ちょっと気持ちが軽くなるんだよね。その繰り返しで、その2分を使い切っちゃったら第三目標、それもダメならサブスリーだけは死守!
・・と考えてるうちに、だいたいフィニッシュしちゃうんだよ。笑
――確かに。当たり前のことなんだけど、思い起こしてみれば私自身、「自己新が狙えないから」といって、諦めてしまったレースもあるかもしれません。
夏目:そうなんだよ・・市民ランナーって、実業団などのトップ選手とは逆で「お金を払って」走ってるんだから、途中で捨てたらもったいないよね(笑)
エネルギー対策はオフィシャルエイドのみ!
――前半から攻めて、後半にエネルギー切れ・・とかいう経験は無いんですか?
夏目:マラソンでは、今のところ一度もないよ。
――マラソン「では」と仰いましたが?
夏目:実は、2013年の青梅マラソン(30Km)で一度、エネルギー切れになって、意識朦朧になってしまったことがあるんだ。その時は「30Kmなら練習でもやってるし大丈夫だろう」という感じで、前日も含めてあまりご飯を食べずにレースに出たら・・。
――そんな体験をされたんですね。その後、対策は何か取りましたか?
夏目:青梅の痛い経験の後、試行錯誤の末に、当日二段階での補給スタイルになったよ。
まず、朝ごはんはスタート4~5時間前にしっかり食べる(おにぎり3個+ヨーグルトが多い)。
スタート1時間半~45分前くらいには、VAAMゼリーとアミノバイタルパーフェクトエネルギーの2つ+カステラ(とかドーナツ)1個を必ず摂るようにしてる。
あとは、朝起きてからスタートまでに、スポーツドリンク500mlをゆっくり飲み干す(ような)感じかな。
最近はほぼ、このスタイルで固まりつつあるよ。
――けっこう沢山摂りますね!
夏目:『これだけ食べたんだから、ガス欠にはならないはず!』というメンタル面での安心感は大きいかな。
――レース中にも、何か摂るんですか?
夏目:基本はエイドのスポーツドリンクかなぁ。暑い日のレースは、塩飴ぐらい持つこともあるけど。
――えっ、何も持たないんですか!?
夏目:うん。オフィシャルエイドでは、水とスポーツドリンクがあればスポーツドリンクを飲むようにしてるし、ラスト以外はすべてのエイドで摂るから、それで大丈夫だと思ってる。
――エネルギー切れの対策としては、エナジージェル等が一般的ですが・・
夏目:一度だけ、ジェルを持って走ったことがあるけど、上手く飲めなくて、手や顔にビチャッとかかっちゃってテンションが急降下・・
特に、狙うレースの時にはランパンにポケットも無いし、どうやって持とうとか、途中で落ちないか?とか、心配するぐらいなら持たない方が良いかなって。
実際、その青梅マラソン以外は一度もエネルギー切れになっていないから、今後もこのスタイルで行こうと思ってるよ。
――レース中に余計なことを考えなくても済むように、という感じですね。
夏目:そうそう。そういうメンタルへの負荷って、意外と重要だと思うよ。
ジョギングはしない!
――エネルギー切れの対策は、だいたい理解できました。でも、前半攻めると、後半脚が動かなくなったり、痙攣したりしませんか?
夏目:もちろん、脚が重いとか、痙攣、マメ、爪トラブル等々・・いろいろあるよ。
――でも、そんな中でもちゃんとレースを上手くまとめているわけですよね。
夏目:うん・・まぁ。
――その秘密を知りたいんです!!!
夏目:そうだなぁ・・・練習のやり方とかも、影響してるかもしれない。
ということで、夏目さんの普段の練習内容を教えていただきました。
平日:5km~15kmラン(主に皇居/週に2日)
休日:15Km~30Kmラン(土日いずれか、または両方)
月間走行距離 200~250km
夏目:だいたいこんな感じ!2週間で一つのサイクルになっていて、その2週間サイクルで1回は、30Km走を入れるようにしてるよ。
――メニューだけを見ると、単純なメニューに見えますが、「練習のやり方が影響している」というのは、どういうことですか?
夏目:普段の練習でも、レースと同じように、最初から突っ込んで走ることが多いんだよ。イメージはだいたい、こんな感じ。
5km~10kmラン
タイムトライアル。最初から全力で突っ込む。
15kmラン
ビルドアップが基本。時々タイムトライアル。
30km走
タイムトライアルだけど、5km10kmの時のように全力で突っ込むわけではなく、あくまでレースのイメージで、息が上がらない範囲で出来る限り速いペースにチャレンジ。
なので、後半に行くにつれて、ペースは自然と落ちていく。
最近は、3分35~40秒ペースで入ることが多いとのこと。
――・・すごいですね。ほとんど前半から突っ込む練習ですね(笑)
夏目:そう!要するに、普段の練習で、最初から飛ばす走りをしてるから、レースでもただ同じことをしているだけなのかもしれない。
――実際、どのくらい飛ばしてるんですか?
夏目:平均して、目標タイムのペースよりも速くフィニッシュできるように意識しているよ。
例えば、マラソンで2時間40分切りを目指していた頃は、平均して3分47秒/kmだから、後半失速しても、全体のトータル(平均)では、そのペースを超えないようにしてるよ。
――練習でレースペースを超えてるんですね!
夏目:レースで目指すのはその動きだからね。
逆に、このペース以上であれば、及第点と考えて必要以上にへこまない様にしてる。
たとえば、5kmランの日はいつも大体17分後半~18分ぐらいで走るんだけど、時々18分50秒とかかかっちゃうこともあってね。
でも、18分50秒って平均3分46秒で、目標ペースは上回っているんだから、問題ない!気にしない!って考えて、次に向かうようにしてるよ。
――あまり厳しく考えるのも、よくないですよね。
夏目:そうそう。タイムトライアル!って言うと何だかキツそうだけど、言い方を変えればペースに縛りをかけていないわけだから、案外気楽に走ってるんだよ(笑)
「身体に負荷はかけるけど、メンタルには余計な負荷をかけない」という感じなのかな。
――ジョギングはしないんですか?(念のため確認
夏目:うん、しないよ(笑)もちろん、ランニングイベントとかで、みんなで走る時にはするんだけど。
夏目さんの「マラソントラブル対策」
――先ほど、レース中に痙攣やマメなど、様々なトラブルを経験したとのお話でしたが、具体的にはどのようなものでしたか?
夏目:痙攣やマメもあったけど、それほど深刻なものではなくて。
自分の中で、一番困っていたのは「爪の痛み」かな。
――「爪」ですか。つま先が真っ黒になっちゃうやつですよね?
夏目:そうそう!それ!僕は下り坂で稼ぐタイプなんだけど、爪が痛いと、稼ぎどころの下りでペースが上げられないんだよね(><)
――それは辛いですね。。
夏目:昨年までずっと困ってて、「マラソン走ってるんだから爪は痛くて当然なのかな・・」なんて、諦めかけたこともあったけど、最近は痛みが出なくなってきたんだよ!
――ほう!何か変わったんですか?
夏目:ずばり、靴!
元々、足元の締め付けが苦手で、ワイドタイプの靴を好んでたんだけど、これが良く無かったみたいで。
スポーツショップの店員さんに相談したら、スリムタイプを勧められてね。最初は半信半疑だったんだけど、新しいスリムの靴でレースに出てみたらピタッと痛みが無くなっちゃってね!
――それはすごいですね。
夏目:その後に、試しに元のワイドタイプでレースに出てみたら、見事に爪が痛くて撃沈しちゃって・・間違いなく靴が原因だと分かったよ(笑)
――それ試しちゃったんですねw
夏目:うん・・店員さん疑ってごめんなさい(笑)
でも、足元のトラブルで靴を見直す、って単純なようで、意外と盲点だったと思う。爪が痛くなるのは、靴の中で足が動いてしまうことが原因だから、もし同じ現象で苦しんでいる人がいたら、ぜひ試してほしいと思う!
――・・・そして、それで治ったら、元の靴で試さない方が良いですよね。
夏目:(う、うるせぇ・・)そうだね
夏目式マラソンメソッド まとめ
- 段階的な目標設定で、気持ちを切らさないレースを。
- レース中に余計な思案をしなくて済むよう、レース前にしっかり補給。
- 普段の練習から、レースペースを意識した走りを。
- レース中に起きるトラブルから目を逸らさず、道具を見直す。
- レースでもトレーニングでも、メンタルに余計な負荷をかけない。
失敗を種に、経験を重ねるごとに自分なりのマラソン理論を確立していった夏目さん。
トレーニングの工夫、レース中のトラブルへの対処など、一つ一つの結果に対し、しっかりとした根拠を持って、次のアクションを起こしている印象を受けました。
また、「メンタルへの負荷」という言葉にあるように、精神的な負担を軽くすること、あまり自分を追い詰めないで、楽しく走ることを大事にされていました。
ここまで見ると、経験豊富なベテランランナーかのような印象を受ける夏目さんですが、実は夏目さん、ここまでしっかりとランニングに取り組むようになったのは、ここ数年のことなんだそうです。
第3回は、かつて「半年に一度しか走らないファンランナー」だった夏目さんが、マラソンにのめり込み、国際レースを目指すようになるまでの半生と、それぞれのターニングポイントと心境の変化ついて、お話を伺いました。
お楽しみに!!