「6秒」
何気ない普段の生活であれば、あっという間に、気にすることもなく通り過ぎてしまうくらいの、わずかな時間。
でも、この男にとって「6秒」は、あまりにも大きい時間でした。
2時間35分00秒
福岡国際マラソン2016年大会の、Bブロック資格記録が発表された7月1日。
一人の男が、人知れず静かに、涙を呑んでいました。
その男、中村慎之介。
中村慎之介(以下、しんのすけ)。29歳、イケメン。
フル自己ベスト:2時間35分06秒(2015東京/ネット2時間34分52秒)
わずか、わずか6秒に泣き、出場を逃してしまった福岡国際マラソン。
その発表の直後の7月9日、世田谷記録会の5000mに参加していたしんのすけに、直撃インタビューをしてみました。
7月9日(土)大蔵公園陸上競技場
傷心のしんのすけ。でも快くインタビューに応じてくれたよ!
――「6秒」だね。
しんのすけ:そうですね・・。やっぱり、ショックでした。。
――そうだよね。ショックだよね。
しんのすけ:ちょっと・・「まさか」でしたね。

ショックを隠し切れない様子のしんのすけ。
――やっぱり、冬のレースは、福岡国際マラソンを中心に?
しんのすけ:もちろんです。資格記録の変更も噂されていたんですが、今までの流れだと、37分とか、38分とかに収まってくれるだろうと思っていたので・・・
――そりゃぁ、そうだよね・・。
しんのすけ:はい・・・。
――・・・。
しんのすけ:・・・。
イカン、空気が悪くなってきたぞ!ここは話題を変えなくては。
そうだ、しんのすけは最近入籍したばかり。明るい話題があるじゃないか!
――そういえば、入籍おめでとう!
しんのすけ:ありがとうございます!そういえば入籍後にお会いするのは初めてですね。

ちょっと元気になってきたしんのすけ。いいぞ、しんのすけ!
――それでも今日は15分台(15’50″13)をマーク。環境が変わっても、ちゃんと維持していてすごいね。
しんのすけ:はい。福岡に向けて、頑張ってましたので・・。
――なるほど、そうだよね・・。
しんのすけ:はい・・・。
――でも、理解がある奥さんで良かったね。
しんのすけ:そうなんです!それは本当にありがたいです!

再び元気を取り戻したしんのすけ。いいぞ!
しんのすけ:でも・・・
――ん?
しんのすけ:嫁さんの実家が福岡なので、福岡国際マラソンで良いところを見せたかったのですが・・・。
やっぱり、まだ心の整理が付いていない様子。。
そりゃ、そうだよね。一番の目標にしていたレースに、参加できないんですから。。
でも”福岡”には行ける!?

懐かしい写真を出してみた。中央がしんのすけ。
――秋のレースは、どうするの?
しんのすけ:実は・・「福岡」に出るんですよ!
――ほぇ!?
しんのすけ:福岡は福岡でも「福岡マラソン」のほうですけどね。笑
――おぉ。当たったのか!?
しんのすけ:はい、当たりました!

三たび、元気なしんのすけ。やっぱり、しんのすけは、こうでなくちゃ!
――奥さんの地元で走れることになって、良かったね^^
しんのすけ:嫁さんの実家の皆さんが、福岡国際マラソンで走るのを楽しみにしてくれていたので、ちょっと残念ですが、、福岡マラソンなら逆に、上位を狙って走れるので、別の意味で、頑張っている所を見てもらえるかなーと思っています。
――ズバリ、目標を教えてください!
しんのすけ:福岡の目標というより、僕はずっと前から、マラソンの2時間半切りを狙っています。まず一つ目のチャンスとして、狙っていきたいと思います!
――2時間半ですか!びわ湖ですね。
しんのすけ:福岡国際に出られないことが分かって、より一層「これじゃダメだ!」と思えるようになりました。
――環境が変わる等、大変かもしれないけど、頑張ってね!
しんのすけ:ありがとうございます!
ショックな気持ちを整理していくように少しずつ、前向きな言葉を探して、話してくれたしんのすけ。
何やら、もぞもぞと準備を始めました。。
あれっ、しんのすけ。。
――インタビューは終わったけど、みんなご飯にいくよ?
しんのすけ:すみません、僕は走って帰ります!

まさかの帰宅RUN。
――えっ、ここから家まで結構あるよ?
しんのすけ:そうですね・・たしか30Kmぐらいだったかと・・・
「でも、目標があるんで!!」
そう言い残して、しんのすけは家路につきました。
・・・ジョグで。

目標に向かう男の背中は、我々に語りかける。
この男、「中村慎之介」。
おそらく「日本で一番、福岡国際マラソンに近かった男」、中村慎之介。
おそらく、資格記録変更の知らせを一番悔しがっていたことでしょう。
しかし、しんのすけは、
周りの環境や条件の変化に不平不満を言うことなく、しっかりと”対応”が出来る男であり、
そして、これほどショッキングな出来事があっても、「自分の本当の目標は何だっただろうか?」と問いかけ、さらなる飛躍のきっかけにする強さを持った男でもありました。

あのガッツポーズをもう一度!
この悔しさを大きなバネにして、新しい福岡国際マラソン、そして、びわ湖毎日マラソンのスタートラインに立つ姿が見られる日は、そう遠くはないはず。
楽しみにしてるぜ!!