8月22日~30日まで、熱戦が繰り広げられた世界陸上北京2015。
中でも、これまで「中長距離王国」と呼ばれていたケニアが、新しい種目で大躍進を遂げたことで、大きな話題となりました。
本日は、そのケニア勢の活躍の秘密を探ってみたいと思います。
北京世界陸上 ケニアがメダルランキングトップ

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2015年の世界陸上では、メダルランキングでケニアが初の1位を獲得しました。
前回大会までも、常に上位に食い込んできたケニアですが、それらは1993年大会のリレーを除き、全て800m以上の「中長距離種目」で獲得したメダルでした。
2013年モスクワ大会 4位(金5・銀4・銅3)
2011年テグ大会 3位(金7・銀6・銅4)
2009年ベルリン大会 3位(金4・銀5・銅2)
2007年大阪大会 2位(金5・銀3・銅5)
2005年ヘルシンキ大会 9位(金1・銀2・銅4)
2003年パリ大会 7位(金2・銀1・銅1)
2001年エドモントン大会 3位(金3・銀3・銅2)
1999年セビリア大会 13位(金1・銀4・銅1)
1997年アテネ大会 4位(金3・銀2・銅2)
1995年イエテボリ大会 6位(金2・銀1・銅3)
1993年シュトゥットガルト大会 4位(金3・銀3・銅4)※4×400mリレーで銀
1991年東京大会 4位(金4・銀3・銅1)
1987年ローマ大会 5位(金3)
1983年ヘルシンキ大会 -位(メダルなし)
ケニア勢各種目での活躍
最も、世界中が驚いたのは、ケニア勢が中長距離種目以外で金メダルを獲得した、この2種目でしょう。
男子400mハードル
1位 N.ベット 47秒79 Nicholas BETT
5位 B.M.ツムティ 48秒33 Boniface Mucheru TUMUTI
終盤まで5~6番手を走っていた、大外9レーンのベット選手が、9台目のハードルを越えたあたりから猛然とスパートをかけ、ごぼう抜きで金メダルを獲得。47秒79は今季世界最高。
Nicholas Bett becomes the 1st Kenyan to win a Gold medal in an IAAF World Championships event shorter than 800m. pic.twitter.com/I192ZMzAd5
— Kenyan Facts (@KResearcher) 2015, 8月 25
男子やり投
1位 J.イエゴ 92m72 Julius YEGO
「Youtubeスロワー」などと言われるイエゴ選手が、3回目に全体重を乗せて放った渾身の一投が、今季世界最高・世界歴代3位の92m72をマークして優勝。
When you throw a world leading 92.72 – the 3rd-longest in history in the javelin…
Take a bow Kenya's Julius Yego! pic.twitter.com/3DyQBzoJlv
— BBC Sport (@BBCSport) 2015, 8月 26
その他、中長距離種目においても、新興国の台頭に苦しみながらも、多くのメダルを獲得する健闘ぶりを見せてくれました。
男子3000m障害
ケニア勢にとっては、絶対に外せない種目。お家芸。
1位 エゼキエル・ケンボイ 8分11秒28 Ezekiel KEMBOI
2位 C.キプルト 8分12秒38 Conseslus KIPRUTO
3位 B.K.キプルト 8分12秒54 Brimin Kiprop KIPRUTO
4位 J.K.ビレチ 8分12秒62 Jairus Kipchoge BIRECH
ケンボイ選手が圧倒的な力を見せ付けて4連覇(ロンドン五輪を含む世界大会5連覇!)。
また、ワイルドカードを含めた4名の選手が、上位を独占する圧倒的な強さでした。
Ezekiel Kemboi @EzekielKem 8:06.01 3000MSC GOLD MEDAL @AthleticsKE #Iaaf #Moscow2013 15 Aug 2013 pic.twitter.com/7vinsRmKFF
— TrackAndFieldPhoto (@TaFphoto) 2013, 9月 24
男子800m
1位 デイビット・ルディシャ 1分45秒84 David Lekuta RUDISHA
近年は故障に苦しんだ世界記録保持者が、本番にピタリ合わせてくる勝負強さを発揮しました。
.@RudishaDavid is back on top after winning the 800m FINAL! #Beijing2015 http://t.co/uoGcZZ3aF4 pic.twitter.com/0V6Z3KFpU1
— FloTrack (@FloTrack) 2015, 8月 25
女子3000m障害
1位 H.K.ジェプケモイ 9分11秒11 Hyvin Kiyeng JEPKEMOI
世界陸上では、2005年モスクワ大会から採用された新興種目。記録的にはロシア勢が強いこの種目で、ケニア勢が2連覇(2013:ミルカ・チェモス・チェイワに続く)を果たしました。
男子と同様に、女子でも3000m障害はケニアの時代が訪れるかもしれません。
WATCH: @emmajcoburn was in medal contention until the final straightaway. http://t.co/U5lFa4QSan #Beijing2015 pic.twitter.com/nhvRGZTz1A
— Runner's World (@runnersworld) 2015, 8月 26
男子1500m
1位 A.キプロプ 3分34秒40 Asbel KIPROP
2位 E.M.マナンゴイ 3分34秒63 Elijah Motonei MANANGOI
5位 S.キプラガト 3分34秒81 Silas KIPLAGAT
7位 T.チェルイヨト 3分36秒05 Timothy CHERUIYOT
10人による激しいスパート合戦の中、出場した4選手全員が8位以内で入賞する素晴らしいレース運びでした。
Asbel Kiprop stormed to his third consecutive world 1500m title -> http://t.co/uCJE0aO5ul #SSAthletics pic.twitter.com/Eg8otEebfk
— SuperSport (@SuperSportTV) 2015, 8月 30
男子10000m
2位 G.K.カムウォロレ 27分01秒76 Geoffrey Kipsang KAMWOROR
3位 ポール・タヌイ 27分02秒83 Paul Kipngetich TANUI
4位 ビタン・カロキ 27分04秒77 Bedan Karoki MUCHIRI
絶対王者モハメッド・ファラーに優勝こそ譲ってしまったものの、2~4位を独占する層の厚さを見せ付けたケニア勢でした。
Mo Farah retains 10,000m title at World Athletics Championships in Beijing http://t.co/H9PjP5GBt8 pic.twitter.com/U9VrLaWI2f
— PapsonSports News (@papsonsports) 2015, 8月 22
その他
女子マラソンで銀(H.キプロプ)・4位・5位
女子1500mで銀(F.C.キプイエゴン)
女子800mでも銅(E.J.サム)
など、世界のレベルが上がるなかでも、しっかりと中長距離種目で結果を残し続けています。
恐るべしケニア人の身体能力
ケニアには様々な民族が有り、それぞれに特有の風習があります。裸足の生活スタイルや狩猟の方法だけでなく、遊びや儀式にも、大きな秘密が隠されているようです。
マサイ族 歓迎の儀式?
みんな、飛び跳ねていますね。足首や膝の使い方が非常に柔らかいことがよく分かります。
ケニア人の遊び?走り高跳び
はさみ跳びなのに、2m近く跳んでいます。。
走り高跳びは、トレーニングに必要な設備にお金のかかる種目ですので、現状は厳しいのかもしれませんが、身体能力としては世界で活躍できる金の卵がたくさん、居るのかもしれません。
狩猟民族のヤリ使い
※野生動物の狩猟映像ですので・・少々、閲覧注意です(まぁ、私たちも肉を食べている訳ですから、似たようなことがどこかで行われているはずなのですが、一応)。
※この映像がケニアのものなのかどうかは不明です。
よく考えてみれば、狩猟民族がやり投で優勝するのは、自然な流れなのかもしれません。
※現在、ケニアでは法律で野生動物の狩猟が禁じられていますので、厳密には狩猟民族とは呼べない(?)ようです。
ケニアの多くの民族(をはじめとするアフリカ系民族)では日常的または伝統的に、走・跳・投の動作を行っているわけで、その伝統に応じたDNAを持っていてもおかしくはありません。
ケニア人が中長距離以外の種目に本気出してみたらどうなるんだ!?という結果の一端を、垣間見ることができた世界陸上だったと思います。
ケニアでは、北京で活躍した「先人」たちを追って、多くの金の卵たちが陸上競技への憧れを持つことでしょう。
もしかしたら近い将来、陸上競技のあらゆる種目で、ケニア人旋風が巻き起こるかもしれません。
3000m障害の高さと、400mハードルの高さは同じ!
ケニアは3000m障害で長く上位独占が続いていますが、長距離的なスタミナと跳躍力の両方が必要となるこの種目で、あれほどの活躍ができるのも、納得できます。
また、400mハードルは、3000m障害のハードルと高さが同じ(男子91.4cm/女子76.2cm)です。
#Jepkemoi of Kenya storms to women's 3000m steeplechase victory at #Beijing2015, giving Kenya 6th gold pic.twitter.com/I23G1xJUE1
— China Xinhua News (@XHNews) 2015, 8月 27
3000m障害のトップ選手は、ほとんど足をかけずに障害を飛び越えていますので、その動きは400mハードルに応用が可能だろうと感じます。
今回の400mハードルでの活躍は、あまり驚くことでもないのかもしれません。
ケニア「マサイ族」のオリンピック
有名なマサイ族の、族内オリンピック?の映像。日頃から飛んだり跳ねたりしている民族ですから、皆さん動きが美しいですね!
以上、北京世界陸上におけるケニア人選手たちの活躍について、まとめてみました。
まだまだ、調べてみれば色んな秘密が隠されていそうなケニア勢の、今後の活躍が楽しみです。
逆の言い方をすれば、現在は貧しくて競技に取り組めない他の国や、高地で生活しているアンデスの民族などなど・・身体能力の高い「埋もれた才能」は、世界中にたくさん残っているのかもしれません。
そう考えると、楽しみなような、ちょっと怖いような。。
日々、レベルアップする世界と、日本人選手がどう戦っていくのか、日本人らしいアイディアや工夫の数々が見られることを、楽しみにしたいと思います!!